待合室でこんにちは

某市市役所はとても立派な建物で、普通の家の3階分くらいはあるエントランスの横にはソファーのある広い待合室がある。まだまだ寒いこの時期でも適度な暖房が効いていてなかなか快適である。

今日はその待合室で人と待ち合わせをしたのだが、ホームレスと見受けられる人々が幾人か、窓際のソファーで寝転んだりしていた。髪の毛と髭が長く伸び、灰色の服を着て寝転ぶ人たち。

その中に一人、熱心に読書をする人がいた。彼は文庫本を食い入るように読み、たまに窓の外に目を移して思索に耽っている様子だった。しばらくすると頭の中で大体考えがまとまったのか、またページに視線を戻し、本の続きを読む。

本を読む、考える、本を読む、考える、・・・

しばらくすると待ち合わせをしていた人物が現れ、ミーティングのために待合室をあとにしたが、どうにも彼の事が気になった。これから10年後に再び彼と再会したとき、人間としての価値をどちらが高めている事ができるだろうか。いつか彼が何かを語り始めたときに、その言葉は随分と重いものになるだろうと思った。