少し前に映画『ソーシャル・ネットワーク』を観ました。
映画を観た後3時間くらい興奮が収まらず、気を落ち着かせるまでに随分苦労しました。興奮もようやく収まりましたので(笑)、感想を書こうと思います。
なぜそんなに興奮したのか。
1人のプログラマが創ったウェブサービスが世界中に広がったことに対する、プログラマとしての共感。マーク・ザッカーバーグが会社を大きくし、金銭的に大きな成功を収めた事に対する、起業家としての共感。自分の境遇と重なるこうした要素が、他人事では無いストーリーとして、面白かったのです。
しかし、映画を観た他の人の感想を眺めるうちに、他の人が言及していない部分に自分が強く反応していたことに気付きました。「ウェブコミュニティ設計者」としての共感です。ザッカーバーグも自分も、「ウェブコミュニティ設計者」という同じ職業の人間だ!、と強く思いました。
世の中にウェブサイトと呼ばれるものはたくさんありますが、その中でも「コミュニティ」は一部です。たとえばGoogleには、検索をしたり地図を調べたりするために行きますが、コミュニティではありません。AppleはiTunesなどのウェブサービスを提供していますが、これもコミュニティではありません。AmazonなどのECサイトや、用途特化型のCGMサイトにはコミュニティ機能がありますが、まず主目的があって、それを補助したり盛り上げたりするためにコミュニティ機能が付いている構造になっています。
パソコン通信、掲示板、ブログ、SNS、twitter..
こうした汎用的な目的に使うことができ、「目的はないのに、人との関わりを求めて何となく人が集まる場所」になるサービスが、いわば「純粋ウェブコミュニティ」と呼べるものだと思います。そしてここに示した例が5つしかないように、ウェブコミュニティの基本的な仕組みは、実はそれほど多く種類はありません。その時代によってブログが盛んに使われたり、SNSが盛んに使われたりしてきました。
さらに成功したウェブコミュニティの基本的な仕組みを最初に作り上げてきた人の数も、それほど多くありません。twitterを作ったエヴァン・ウィリアムズは、Bloggerによってブログを世の中に広めた人物です。日本でも2ちゃんねるを作ったひろゆきさんが、ニコニコ動画の立ち上げにも加わっています。マーク・ザッカーバーグはこうした「ウェブコミュニティ設計者」の中で最も成功した人物でしょう。
非常に興味深いことに、こうした設計者たちはある年代より若い層の人間ばかりで、何度もウェブコミュニティを成功させる傾向にあります。
ウェブコミュニティを設計するには、「技術の理解」と「人間の理解」の2つが必要です。ちょうど建築家のように、壊れず機能的な建築を作ると同時に、その空間の中で時間を過ごす人々の行動を想像し、そこで得られる楽しさを設計できる必要があります。技術と人間、双方への理解を持ちながら、経験を積んだ人間がプロの「ウェブコミュニティ設計者」であると思います。
ザッカーバーグの話で面白かったのは、招待制のSNSがハーバード大学のクラブの仕組みそっくりだったことです。映画で描かれているザッカーバーグは、一般的な言葉で言うと「人間」を理解できているとは言えないのでしょうが、彼は身の回りの学生が招待制の社交クラブに入りたがったり、女性との出会いを求めたりする行動を観察しながら、それをコードに置き換えていったのだと思います。普通の人が主体的にやっている社会行動を、一歩引いた目で見ながら、システムに落とし込んでいく。そういう事に興味がある人間が「ウェブコミュニティ設計者」になれるのだと思いました。
僕自身は、はてなダイアリーで日本でブログの先駆けとなるサービスを開発し、その後もはてなスターなどを作ってきました。改めて、自分の強みであり、はてなの強みはこの「ウェブコミュニティ」を自分たちで考えて作っていける力だと感じています。
さらに新しい時代のウェブコミュニティの実現に向けて、この道をまっすぐ全力で進んでいこうと思っています。
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