はてなブログを11月7日にベータリリースしました。
リリース以降、予想を上回る勢いでベータ版の利用申し込みを頂いており、上限を拡げるたびに、すぐに人数が上限に達する状態が続いています。
先日の500人追加応募の際は、募集開始1分で160人の応募がありました。驚くべき勢いです。
日本のブログブームが本格的に始まったのは、はてなダイアリーをリリースした2003年から。まさにはてなダイアリーが日本のブログブームのきっかけでした。
それから8年後の今、なぜ改めて今、ブログなのでしょうか。
つぶやくだけが、文章じゃない
ブログには当初、「自己表現ツール」と「コミュニケーションツール」の2つの要素が含まれていました。
文章や写真を使って表現をする仕組みに加えて、コメントやトラックバック、リンク元表示などでお互いにコミュニケーションをする仕組みを内包していました。
ブログが出始めた当時、自由にテキストを書き込めるサービスは掲示板かブログくらいに限られていました。人とコミュニケーションを取りたい人のニーズをブログが受け持つのは自然な流れでした。
特に、掲示板のような発言者の人格が見えにくい場所ではなく、ブログという、いわば「ネット上の人格」を持ち、その上でハンドルネームを使用したコミュニケーションを行うことによって、「相手が誰なのか」を知りながら話せる安心感をブログが提供し始めました。コミュニケーションには、「次第に相手の人格を知りたくなる」という自然な性質があります。ブログがそのニーズを吸収しました。
しかし、コミュニケーションにはさらに、「リアルタイム性を志向する」という性質があります。なかなか返事が来ないよりも、すぐに返事が来る方が、誰だって嬉しいわけです。
twitterの登場によって、文章は短文化し、リアルタイムになりました。facebookの投稿も短文です。コミュニケーションのニーズは、ミニブログやSNSが受け持つことになりました。
ネットで知り合った人や、ともだちとコミュニケーションを取りたければ、twitterやfacebookでつぶやけばよくなりました。
はてなブログにはトラックバックを組み込みませんでした。しかしベータ版開始以降、一度も「トラックバック機能を付けて欲しい」という要望をもらっていません。ブログから、「コミュニケーションツール」としてのニーズが消えてきている事をよく表しています。
しかし、つぶやきだけが文章ではありません。どうしても140文字では表現できない内容があります。
たとえばこのブログがまさにそうです。こうやってまとまった量の考えを、つぶやきで表現するのは至難の業です。
「フロー」と「ストック」という概念があります。フローはどんどん流れていきます。ストックは長く生き残ります。
twitterはフローです。ブログはストックです。
まとまった考えを書いたなら、後からでも見てもらえるようにストック側に残しておきたいものです。
そんな難しい内容ばかりではありません。たとえば旅行の記録は、写真と文章をまとめて残しておきたいわけです。子供の成長を毎日育児日記に記録したりするにはブログが必要になります。
コミュニケーションツールの分離によって、ブログの役割が、より明確になりました。
まとまった量の文章や写真を表現するためのツールになりました。
改めて、その役割が明らかになりました。
今なら、よりシンプルにブログを作る事ができます。
はてなブログは、新しいブログのニーズに沿った、シンプルなブログになりました。
ともだちだけが、社会じゃない
SNSの登場によって、インターネットに巨大なプライベート空間ができあがりました。
多くの人は、どこの誰か分からない人と議論をするよりも、ともだちとおしゃべりすることを好みます。
携帯をスマートフォンに買い換えて、facebookを始め、ともだちを作り、そこから初めてインターネットに文章を書いたり写真を投稿したりする人が増えています。インターネットに投稿する入り口はSNSになりました。
ともだちとおしゃべりしている方が敷居が低いし、頻度も高くなるのは、実社会のコミュニケーションを想像しても自然な事です。
しかし、まさにその実社会を考えれば分かるように、おしゃべりする相手はともだちだけじゃありません。それだけではあまりに退屈です。
自分がプログラマなら、同じ技術を学んでいる技術者が集まる勉強会に出かけます。
起業家は起業家が集まるカンファレンスに出向きます。気の合う社長に会いに行きます。
子育てしている母親は、子育て仲間が集まる場所に出かけます。
自転車に乗って上達したら、レースに出てみたくなります。
ともだちだけが社会ではありません。人は、自分の興味があること、自分が専門としていることを通じて、もっと社会とつながりたいと思っています。ともだち以外の人とつながりの生まれる場所に行きたいと感じています。
ソーシャルネットワークは、"social"という言葉を持ちながら、あまりこういうニーズには応えていません。既に知り合ったソーシャルな関係を定着させることには使えても、新たなソーシャルネットワークを開拓する事には使えません。
新しい社会とのつながりを提供しているのは、むしろオープンインターネットの領域です。巨大なプライベート空間であるSNSに対する、検索エンジンで到達可能なオープンインターネットの領域に、新しい出会いが満ちています。
大学時代、僕は研究室の自分のホームページに写真をアップし続けていました。
1日数十人しか来訪者がないこじんまりとしたホームページでしたが、京都の街並みや、友人のポートレート写真などを加工して掲載し続けていました。
しかしある日、大学のとある先生が突然、「君の写真のファンだ」と言いました。
その一言は、僕が写真の仕事を目指すきっかけになりました。
ともだちではない人との出会いやつながりこそが、人生の転機になります。
ともだちとのおしゃべりからは、連続的な日常しか生まれません。昨日までの延長です。
未来に向かって、新しい人生を切り拓いてくれるのは、社会との新しい接点です。
巨大なプライベート空間であるSNSが出てきたことで、オープンインターネットの役割もまた明確になりました。
オープンインターネットの中に、ブログという人格を持つことで、社会との新しい接点が生まれ、人生に新しい展開が生まれるのです。
「個」の時代へ
日本の社会では「組織」の存在が非常に大きいと思います。
「ABC株式会社」で課長をやっている斎藤さんなら、「斎藤さん」である前に、「ABC株式会社の課長」である、ということが、まず社会に対してのアイデンティティになっている場合が多いように思います。
会社が、社員がブログやtwitterに自由に発言するのを好ましく思わず、そのために興味はあってもブログは書けない、という人も多いのではないでしょうか。
しかしその会社も、これからどうなるのかは分かりません。「個」としての活動の比率は、もっと高くても良いと思います。
実名で活動するのが難しければ、ネットの人格を別に作ってハンドルネームで活動すれば良いわけです。
あるいは家庭にいる人も、活動範囲を家族とともだちだけに限定する必要は何もありません。
ブログという人格を持ち、自分の日常を綴ること。自分が好きなこと、専門としていること、大切にしていることを表現し、「個」としての活動を始めること。
「個」としての活動が、人生に新しい展開を持ち込み、より豊かな人生につながります。
ブログはこれから、さらに重要なツールになっていきます。
ブログを始めてみませんか。
きっと、思いもよらぬ出来事が、あなたを待っています。