何か新しいアイデアを考える時、それを楽しんでくれる人がどれくらいいそうかを想像しながら考える。たとえばはてなハイクで新しいキャンペーンを開催するんだけど、どんなイベントにしたら楽しいだろう、という話になったら、いろいろアイデアが出てくるんだけど、それを実際に想像してみてどれくらい利用者が楽しんでくれるかによってアイデアの優劣を判断しようとする。キャンペーンに限らず、新しいサービスや新しい機能を作る際にも考え方は同じだ。
その判断に必要なものは何なのかなあという事を考えていたんだけど、それは感度が良くて精度の高い「楽しさメーター」を自分で持つ事だと思った。自分が感じる楽しさ、他人が感じている楽しさを普段から正確に測り続け、多くの人が何をやっているときに一番楽しいと感じているかという情報をたくさん自分の中に蓄えておく。そうする事でようやく、いろいろなアイデアの中から秀でたアイデアを見つけ出す事ができるように思う。要するに「楽しさの舌を肥やせ」という事だ。
例えば優れた料理人というのは、もちろん調理技術が一流である事は前提としてあるだろうが、その上で味の差をつけるのは「舌」のはずだ。たくさんの美味い料理に接し、自分の中で「美味さのメーター」である舌の感度、精度を上げる事で一流の料理が作れるようになるのだと思う。どれだけ包丁を超絶技巧でさばく事ができても、舌が無ければ美味い料理なんて作れないはずだ。
同様に、良いサービスを作るには、その良さを感じる舌を養わなくてはならない。例えば雑誌の特集とかで「ブレストのやり方」「アイデアの生まれる現場」みたいな話になると、よく「いかにして素晴らしいアイデアを出すか」みたいな部分が取り沙汰されるが、実はその先、「良いアイデアを見極める力をどのように伸ばすか」という部分のほうが重要なのではないかと思う。
僕はよく人と接する時に、「この人はこういう事をするのが好きなんだなあ」という部分を見つけるのが大好きだ。「この人は技術の話になると目がキラキラし始める。すごく技術が好きなんだなあ」とか、「この人は弱い立場の人が活躍している様子を見ると感動している事が多い。そういう取り組みが好きなんだなあ」みたいなことをついつい探してしまう。「人が何かをすごく好き」というのが嬉しくて、ついつい探してしまうのだが、よく考えるとそれが新しいものづくりをする際に役立っているのかもしれないと思った。
先日はてなハイクでワコムさんのキャンペーンを行った際に、ワコムロゴの5色から2色を選んで、2色だけで絵を描いてもらうキャンペーンを行った。この企画を考えたのは、それより前にはてなデフォルトさんというキーワードでたくさんのユーザーがはてなのデフォルトアイコン()をモチーフに遊んでいる様子を見ていたからだ。はてなにユーザー登録すると自動的に設定されるプロフィールアイコンをモチーフに遊ぶ、という一見不思議な遊びを見つけると、「なぜユーザーはこの遊びに興じるのだろう」とついつい考えてしまう。それで、きっとそこには、2色で遊ぶ楽しさや、表情の無いデフォルトさんを擬人化したいという希望、不条理さの楽しさなど大きく3つくらい楽しさの要素があるのではないか、という事をあれこれ考える。無意識にいつもそういう事を考えているように思う。そういうことが結構大事なのかもしれない。