ちりとてちん

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NHKのちりとてちんが最終回を迎えて終わった。感動的なドラマで何度も涙を流させてもらったし、昨年の秋に日本出張が増え始めた頃に見始めて、その間に京都移転の決定、社員の出入り、引越しなどが立て続けに起こった激動の時期を通して観ていたもので、思い出深いものになりそうだ。
ドラマを観ていて一つ興味深かったのは、「プロとしての話家」という存在だ。客の前に出て木の棒をぱちんと鳴らしたその瞬間から、プロの話し手として目の前にいる人を笑わせるために仕事としての話をする。客をどれだけ笑わせられるか、その一点に人生をかけて技術を磨いていく落語家の姿を、ドラマながら少し垣間見た気がする。
会社の経営をしていると、たまに話すことが自分の仕事ではないかと思うことがある。自分ひとりだけでは大したことはできない。自分ひとりではできないから、たくさんの社員を集め、まとめあげ、チームでやらなければ決して成し遂げられないような大きな事をしようとする。そのために会社は存在する。
お互いに好き勝手な事ばかりやっているのなら、個人でやればいい。一部の人間が決めた事をその通り仕事としてやるだけであれば、社員の力は引き出せない。個々の社員の自発的なやる気をまとめながら、全体として価値のある仕事に仕上げていかなければいけない。それは会社の永遠のジレンマだと思う。
自分の専門分野の研鑽も重要だが、適切な場所にいて適切な言葉を話す、ということが会社をまとめるうえで重要だと考えていた時に、この話家のプロたちの姿を見て、そうか、話して笑わせる、というただそれだけの事にもこれだけ奥深い世界があるのか、もうすこし話すということを考えなくてはと思ったものだ。
おかしな人間がたくさん現れて、陽気に過ごす様子から、そんな事を感じながら、楽しませてもらった半年だった。