新しいプロジェクトを始めようということで構想段階に入っている。まっさらの状態から新しいことを始めるのは基本的に楽しい事だけど、苦しい時間でもある。新しいものは別に世の中に求められているわけではない。それが無くても世の中は回っているのに、わざわざ新しいものを作って、「ほら、これを使った方が便利でしょ」と主張していかないといけない。だから当たり前だけど「そんなもの要らないよ」と言われる事のほうが多い。「言われてみれば、こんなものが欲しかった」というものを、考えて考えて考えて作らないといけない。
考える時はじたばたする。何が正解かなんて分からないから、あれこれじたばたする。今のネットコミュニティで雑談していても始まらない。はてなアイデアを毎日全部読んでいても足りない。周りにいる人に「ねえねえ、なんか不便に思ってること無い?」と質問しまくって困惑させたり、オフィスを飛び出して2時間くらい散歩に出かけたり、カフェに出かけて議論したり、車に乗って走り回ったり。観察と思考、観察と思考、その繰り返しだ。傍から見ていれば、ただの変な人かも知れない。いい歳してなんで昼間からボーっと散歩しているんだって。
でもそうやってじたばたしながら、社会の空気をつかもうとしているのだと思う。世の中をうろちょろして、社会が求めているものを探しているのだ。それがあればさらに便利になるのに、まだそれが欲しいという事に多くの人が気付いていないもの。そういうものが発見されるたびに、少しずつ人の生活は変化してきた。人に会ったり街の中をふらふらしていると、時たまなんだか気になる行動を目にする。なぜそれが心に引っかかるのかは分からなくても、そういう様子をどんどん頭に入れておく。そういう材料をたくさん放り込んでおいて、長い時間考えると、ふとその奥に隠れている一本の糸みたいなものが見えてくる瞬間がある。こういうものを作れば、あんな人やこんな人がこういう風に使ってくれるんじゃないか。なぜ今まで気付かなかったんだろう。そういう風な糸が一筋見つかった時は幸せだ。体がぶるぶる震えてしまう。
ぶるぶるまでもう少しじたばたしよう。