まさに起業のプロセスを体験できるStartup Weekendの優れたフォーマット

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Startup Weekend Kyotoに参加しました。8月に続いて2回目です。

週末3日間で新しいスタートアップを生みだそう!という西海岸的なノリのイベントなのですが、1回目に審査員として参加してみて不思議だったのが、「何も知らない人たちが集まって、どうやってチームを作り、こんな良質なアイデアを形にすることができたんだろうか」という事でした。

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金曜日の夕方にお互い見ず知らずの人たちが集まってアイデアを出し合い、チームを作って、3日目の日曜日の夕方にプレゼンをする、という流れなんですが、そんなことを日本で普通にやっても、アイデア出しもさることながら、チームを作ることすら難しいんじゃないか、と感じます。その秘密が知りたくて、今回は初日のアイデアピッチとチームビルディングにも参加しました。

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参加してみてその謎が解けました。アイデアが選別され、チームが形成されるための非常に良くできたフォーマットがあり、これは使えるぞ、と思ったので紹介したいと思います。

まず最初にビールを飲みます(笑)。ピザを食べます。ゆるく交流します。
1週間仕事をやり終えた開放感で、テンションが上がってきます。

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次に適当に10個くらいのチームに分かれて、みんなで思い付くままにキーワードを出して、適当な2つのキーワードを結びつけた架空の会社の事業プレゼンが始まります。アイデアピッチの練習によるアイスブレイクです。

キーワードは本当にでたらめで、僕が入ったチームは「食いしん坊・お代官ドットコム」でした。この適当な組み合わせから、なるべく興味を引いてもらえるような事業内容をでっち上げ、ピッチを行います。

ここで、効果的なピッチとはどういう構成か、が解説されます。まずは解決したい課題を明らかにさせ、その解決方法を提示する、という順番です。実際にでたらめピッチを聴いていて、それを実感する事ができます。

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続いて本番のアイデアピッチです。「でたらめキーワード」と同じように、1分間のピッチを行います。
この時にはかなり場も温まっていて、思わず自分もアイデアを話したくてうずうずしてきます。見学のつもりで一緒に来ていたid:nagayamaは、思わずピッチして自分のチームを持つ羽目になってしまいました(笑)。僕も審査員なのに思わず手を上げそうになって我慢していました。

50人くらいの参加者のうち、結局30人くらいが手を上げてアイデアを話しました。

何も準備をせずに、いきなり「では、アイデアがある人は前に出てきて話してください」と言われても、なかなかアイデアを話す人は出にくいでしょう。軽食を食べて交流し、でたらめのピッチ練習で「バカなことを言っても良いんだ」という雰囲気ができあがって、半分以上の人がアイデアを発表するのを目の当たりにして、これはすごいな、と思いました。

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そこからチームができあがるまでのプロセスも非常に興味深いものでした。
30人のアイデアから、9つのチームに絞られたのですが、どうやってアイデアを絞り、チームメンバーを決めていくのか。

発案者は自分のアイデアを持って立ちます。アイデアがない人が、さらに詳しくアイデアのある人の話を聴き、「この人のチームに入ってみたい」と思うチームにポストイットを貼っていきます。あまりポストイットが集まらない人は、他のチームとくっついたり、自分のアイデアを諦めて他のチームに入ったりします。ここがすごく面白い。

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表面的には非常に楽しくおしゃべりしているように見えて、実は結構シビアです。一種の生存競争です。自分のアイデアに人が集まらなければ、他のチームとくっつくか入るしかなくなるので、交渉をしたり、他のアイデアを聞いたりしなくてはいけません。そういうプロセスが同時並行的に行われ、良質なアイデアや、人の心を動かす話ができる人のところに人が集まっていきます。そうやって9つのチームができました。

最終的には、はじめからチームメンバーを多く集めていたGo! Go! CoWorkingチームが優勝しました。他にも、今回も魅力的なアイデアがたくさん生まれました。

最終のプレゼンの様子はこちら↓

このようなプロセスを聞くと、話がうまい人や、人に好かれやすい人が有利になり、客観的にアイデアが評価されないのではないか、と一瞬思ってしまいます。しかし、いや待てよ、と思うんです。よくよく考えてみれば、まさに起業なんてそういうプロセスそのものだと思います。

ともだちに「一緒に会社をやろうよ!」と声をかけて、一緒にやってくれるかどうかなんて、アイデアの善し悪しだけじゃなくて、「こいつとなら何とかなるかも知れない」という賭けに出られるかどうかです。さらに会社を大きくしていけるかどうかは、いろいろな得意分野を持つ人に話しかけて、やりたいことを共有できるかどうかにかかっています。

自分のアイデアを人に話したり、生き残りを賭けて仲間を集める、といった体験は、日常的にはあまり体験することではありません。しかし、こうした機会を通じて、アイデアを出して人を動かすスキルを多くの人が磨き、優れたアイデアを実際に社会の中に実現させていくことによって、起業が増え、社会がさらに面白くなり、成長していくことにつながると確信しました。

ぜひ若い人や、起業なんて考えていないような人でも、この「楽しい生存競争」のプロセスを体験して欲しいと思いました。
次回またぜひお会いしましょう!