観察からの発想

京大経営管理大学院でのマーケティング研究会にお邪魔させて頂きました。会のテーマが「定性調査の方法論」ということで行動観察やメタファーによる定性調査の事例紹介があり、特定の商品から連想する写真を10枚くらい持ってきてもらって、言葉にならない感情を引き出す方法などが紹介されていました。写真で説明してもらう、というのはなるほどなと思いました。

京大のサービス・イノベーション人材育成推進プログラムさんには、最近何度か関わらせて頂いていて、1月にはてなの事業を紹介する講演をさせて頂き、2月に学生の皆さんのフィールドワーク報告会にも参加させて頂きました。

このフィールドワークの報告会も面白くて、「街で人の行動を観察し、そこからはてなの携帯を使った新サービスを提案する」というものでした。学生の皆さんが4つのグループに分かれて、それぞれ携帯電話を使っていそうな駅のホームやカフェ、店舗などで観察を繰り返し、その行動から新しいニーズを汲み取り、新サービスを構想してはてなに対してプレゼンテーションする、というものでした。

発表会にははてなからも4名のメンバーが参加させて頂き、各チームの発表を聞いたのですが、それぞれのチームの発表の中にインスピレーションが沸くような発見があり、実際に提案されたサービス内容も要素としていくつか可能性のありそうなものがありました。(良いアイデアは今後はてなサービスに付加して出していきたいと思います)

観察結果で興味深かったのは、たとえば携帯電話を複数人でいるときに使うシチュエーションが結構ある、というような発見です。また、駅などで一人で携帯を使うときには、なるべく短時間でしまおうとする(=ある層には携帯を出しているのはマナーが悪いという考えが浸透している)という傾向も結構あるように思いました。

人の行動を観察して新しいサービスのネタを考える、というのは、サービスを作る人(はてなだとディレクターなど)が常日頃からやっている事だと思うのですが、ちゃんとそれが専門分野としてあり、こうやって教育が行われていて、しかもエスノグラフィーというもともと人類学の手法から進化しているというのは興味深いです。

行動観察を行う手法が定式化されてどんどん効率的になったとしても、「こうやれば誰でも新サービスを生み出せる」という事にはならず、人の行動を把握することと新しいサービスを創出することの間にはどうしてもギャップがあり続けるとは思うのですが、こうやってうまく人の行動を把握する方法があれば、他の人に調査をお願いしたり、自分一人で観察しているだけでは分からない情報を集めることも可能になるわけで、なかなか良い勉強になりました。