課外活動

MOTの達人―現場から技術経営を語るという本をめくっていたら東芝で日本語ワープロの開発をした森氏の話が出てきた。最初全然関係のない研究をやっていたのに、ある時手書き文字認識の技術を研究し始め、郵便局の郵便番号読み取り機を納入。その後数字以外の読み取り技術の需要を知るために官庁にインタビューに行ったら、読み取りよりも文書を作る方が欲しいと言われ、当時不可能だと言われていたかな漢字変換式のワープロ開発を成功させた、という話。
もう一例としてソニーでCDのハードを開発した鶴島氏の話が出てくるが、2つの例に共通していて参考になるなと思うのが、まず目標がユーザーの視点で適切に設定されていること。官公庁で文書作成に使えるポータブルなワープロ、とか、レコードの代わりに使えるデジタルの音楽プレーヤー、とか、そう言うコンセプトが適切であったことが大きいと思う。それから興味深いのが、両方とも課外活動的に、社内で批判や嘲笑を浴びながらスタートしている点。周囲になかなか理解されず、本来の仕事を昼にやって、夜に"アンダー・ザ・テーブル"で進める、みたいな話が出てくる。
こういうのを読んでいると「イノベーションを起こしましょう」とか会社全体で言って昼に真面目に新しいことに取り組んでいても、なかなか面白いものは生まれないんじゃないかという気もしてくる。(しかしMOTの達人と言いながら、発端は課外活動か、と思うと何か微笑ましくも感じる)
日本の会社がすごいのは、こういう活動が社内から出てくることだと思う。シリコンバレーとかだと、新しいアイデアが浮かんだ瞬間に会社を辞めて、自分で会社を作る人がほとんどだろう。しかし日本だとそれが社内で起こり、うまく行きそうになると会社のいろいろな人が動いて製品化が進む。
日本からインターネットの新しい流れを作り出せるとすると、この辺にヒントがあるんじゃないかなという気もする。ちょっとした課外活動を許容できる自由さ、ある程度の長期雇用を前提とした信頼、みたいなところから新しいものづくりをしていく、そういう事ができると面白いと思った。