自転車旅行のように、仕事をしよう

アメリカに渡ってみて僕が気付いた事は、就業時間とか休みの日数とか、そんなつまらないことにいかに自分が囚われていたかという事でした。退屈だから仕事でもするかとも思ったけど、どうせまた明日の月曜日から一週間あるんだし今日は休んで映画でも観ておくか、とか、休日にも仕事をしたのでそこはちゃんと社内にアピールしておかないとなと思ったり、とか、もう今日は休んだ方が良さそうだと思っているのに周りでみんなが頑張っているのでなんとなく会社に残ってみたりとか。
自分は経営者なんだし就業規則的なことなんて関係なく自分はやるべきことをやっている、と思っていたつもりでも、どこかでいつの間にかいろんなことを気にして行動するようになっていました。それに気がついたのです。
アメリカに行くとまず昼の時間が違います。だから出社時間とか終業時間とかが関係なくなって、1日のほとんどの時間世界のどこかで誰かが仕事をしているようになります。だから「誰かが働いているから自分も働く」という考えがまず崩れます。
それから、アメリカは日本ほど祝日は無いし、祝日によっても働いたり働かなかったりするのは会社や個人によってばらばらで、全員で「今日や祝日なんだから仕事をしてはいけません」的な雰囲気はありません。それは意志を持った選択なわけです。「俺はコロンブスの記念日は祝わないから仕事するんだ」という事を自分たちで決めれば良いのです。
そういう環境で仕事をしていると、だんだん細かい事を気にして周りに合わせていた自分が馬鹿馬鹿しく思えてきて本当に恥ずかしくなりました。いったい何をやっていたのだろうか、というこの気持ちは、20歳のときに初めて海外に出て、自分の大学名を言っても誰も分かってくれない時に感じた感覚に近いものがありました。
それでHatena Inc.では出社時間を特に決めずに、1日1回、11時頃にミーティングをする、という事だけ緩やかに決めて、あとは基本的に自由、ということにしました。そのミーティングも場合によっては省くし、細かいことを気にせずに自分のパフォーマンスを一番出せるように自分で考えて働こうという約束にしました。
朝家でプログラムを書き始めたら調子が乗ってしまったのでそのまま自宅でプログラムを書き続けることもあれば、気力が切れてしまったので夕方に家に帰って休むこともある。どこかでじっくり構想を練りたいときはカフェに出かけて考えたり、本を読みたい時は図書館で勉強したり、ちょっとした考えをまとめるために散歩にでかけたり、そういうことをいつも自分で工夫して仕事をするようになりました。
これはまだHatena Inc.の人数が少なくて、お互いに尊重して仕事をできているという理由ももちろんあります。それでも、そうやって自分なりに工夫をして自分の仕事の質と量を上げる努力をすることが最も本質的な努力であり、それを忘れてはいけないということを思ったのです。
考えてみれば、昔自分が自転車で旅行していたときは、朝起きたら走り出して、面白い場所があれば楽しんで、疲れたら休む、そういう生活をしていたのです。アメリカを自転車で横断したときもそうでした。今日が何曜日かなんてすっかり忘れていて、天気や温度の方が大事だったのです。
走りたいときに走る、疲れたら休む、そんな自転車旅行のように仕事をしよう、とある時僕は考えました。