一人で複数の顔を持つ

はてなで2個目、3個目のアカウントを作成できるようになりました。
http://d.hatena.ne.jp/hatenadiary/20050616/1118906268
これまではてなでは、主に人力検索での自作自演などを防ぐために「1人1アカウント」と規約で定めていたのですが、人力検索以外のサービスが増え、「2つ目のアカウントを作って2個目のダイアリーが書きたい」といった要望を頂いていたことを受けての機能追加となりました。

はてなダイアリーやアンテナ、ブックマーク、RSSなど多くのサービスは基本的に無料で提供していますので、こうしたご要望があるのであれば複数アカウントをシステム上可能にしつつ、不整合が起こる部分だけ制限を行う方法を取るべきであると考えました。

サブアカウントを作っても、そのアカウントがサブアカウントであることは分からない仕組みになっています。また、そのサブアカウントメインアカウントと同一人物であることも他のユーザーには分からない設計になっています。

1人の人間が複数の顔を持ち、それぞれ別の人格として振舞えることができる権利については、昨年の住所登録問題の頃から良く考えるようになりました。

住所登録問題とは、はてなのユーザー全員に住所登録のお願いをし、多数の反対意見などを頂いてその方針を撤回したという一連の出来事ですが、この際に一番心に残った意見は、
「自分は匿名でいられるからこそ今の日記の内容が書けている。この日記が実世界の自分と結び付けられた瞬間に、自分の日記は終わってしまう」
といったものでした。例えば家族に秘密で自分の思いを書き綴っている方がいて、住所確認のはがきが自宅に届いて家族にアカウントが知られてしまったら二度とその内容は書けないのだ、というような意見です。

恥ずかしながら、住所登録制度の検討を行っている時には、こうした問題が大きな問題であることはうまく認識できていませんでした。しかし、住所登録方針に対して寄せられた数百通の意見に目を通すうちに分かったことは、「インターネットには匿名権が必要だ」ということでした。

匿名にすると人の行動が無責任になるし、いざ違法行為などが起こっても誰だか分からないんじゃないか、と言った危惧があるにせよ、それと同等かそれ以上に、一人で複数の顔を持つ事ができるからこそ表現できることがあり、演じられる役があるというインターネットの面白さを忘れてはいけないということを、改めて学んだ気がします。

今回のアカウント追加においても、はてな内ではどのサブアカウントがどのメインアカウントと紐付いているかはもちろんシステム上管理をしていますが、この情報は重要なプライバシー情報であると考え、違反行為の捜査などではない通常業務や単なる興味などで社内からこうした情報が参照されないよう、社内の徹底を図って行きたいと思います。

はてな内のアカウントは、そのアカウントによって行われた行動(質問履歴や日記の履歴、アンテナやブックマーク)が誰からも閲覧可能であると言う意味でアカウント内での自己同一性を保ちながら、一方で、他のアカウントを持ち別の人格として振舞える自由や、実世界の存在や他の人格と結び付けられない自由を適切に保障していきたいと考えています。

そうすることが、はてなでの大きな目的である文化の醸成や、コミュニケーションの充実に繋がることになると信じています。